こんにちは、石倉です。
今回は「響け!ユーフォニアム」の話をしたいと思います。
目次
「響け!」との出会い
僕が最初に「響け!ユーフォニアム」に携わったのは、大学3年生の頃になります。
当時、「響け!ユーフォニアム」の定期演奏会やアニメの中で使われている音は、洗足学園音楽大学が担当しており、何年かに一度代替わりして担当する学年が変わっていました。
僕の学年が担当する前は、3個上の学年の先輩方が担当しており、「響け!ユーフォニアム」の素敵な楽曲達を合奏している音が聴こえてくるたびに「いい曲だなあ」なんて思っていたんです。
そんな矢先、担当する学年がちょうど僕たちの学年に回ってくることに…!
とっても嬉しかった。
なんて言ったってあの「響け!ユーフォニアム」の楽曲を演奏できる機会がもらえたんです。
僕にとってはとてもラッキーでした。
というのも、当時は毎年「響け!」を担当する学年が代替わりしていくわけではなく、数年に一度の代替わりだったんです。
ましてや、音楽大学受験の時に1年、浪人している僕。
この時ばかりは、浪人した自分を褒め称えましたよ。
なんて言ったってもし浪人していなかったら、「響け!」に関わっていなかった可能性がとても大きい…!
浪人は死ぬほど嫌な思いをたくさんしましたが、今思えばあの時一年浪人していなかったら「響け!」と出会えていないし、「響け!」で演奏することや黄前久美子や黒江真由の音を担当したり、作編曲家として参加することもなかったのかと思うと⋯。
もしかしたら楽器を続けるという選択をしていなかったかもしれません。
そのくらい僕の楽器人生にとって大きかったんです。
初めての「定期演奏会」
僕が最初に出演した定期演奏会は、「響け!ユーフォニアム」公式吹奏楽コンサート 〜北宇治高校吹奏楽部 第5回定期演奏会 5周年記念公演〜です。
この演奏会で初めて「響け!ユーフォニアム」(楽曲)を演奏することに。
これが人生初のコンチェルトになりました。
この演奏会があったのが2021年なので今から約3年前の出来事ですが、死ぬほど緊張したのをよく覚えています。
しかも暗譜。
「音間違えたらどうしよう…」なんて本番直前まですごい弱気でした。
でも、ステージに立ってみたら。
応援してくれるお客さんの顔がたくさん見えて、「今できる音楽を一生懸命やろう」という気持ちになり、なんとか最後まで演奏することができたんです。
ここから先日行われた「響け!ユーフォニアム」公式吹奏楽コンサート~北宇治高校吹奏楽部 第8回定期演奏会~に至るまで、様々な演奏会に出演させていただきました。
映画では黄前久美子の音を担当することに
何度も演奏会に出演させていただく中で、「響け!ユーフォニアム」の主人公である「黄前久美子」の音を担当することに。
一番最初に担当したのは、「特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~」。
北宇治高校吹奏楽部では夏コンクールが終わり、いよいよ久美子の代になって初めてのアンサンブルコンテストに出場するというお話です。
実は、CDにもなっています!
この映画、久美子の音出しシーンから始まるのですが、音出しシーンを録音するのにも何テイクか録りました。
音出しの音をレコーディングするのは、これが人生初。
最初の音出しシーンもそうですが、一つ一つのシーンへのこだわりがとにかくすごいのも「響け!」の特徴です。
制作陣の方々のこだわりに、必死に食らいついてレコーディングしたのをよく覚えています。
映画の中では実際にアンサンブル曲を演奏するのですが、指揮者がいないアンサンブルならではの、テンポ感がずれてしまったり、それによって少し人間関係がギクシャクしてしまったり…。
と、とってもリアルなお話になっていますのでぜひ。
ユーフォ3期では黄前久美子と黒江真由の音を担当
そして、「響け!ユーフォニアム」3では、黄前久美子と黒江真由の音を担当することに。
2人の音を担当するというのは、実際とても難しい。
というのも、この二人、性格がぜんぜん違うんです。
やはり楽器の音色には人柄が出るもの。
その部分をコントロールするのは、とっても苦労しました。
あの再オーディションのシーン
ここからはネタバレを含みます。
あの有名な再オーディションのシーン、ありますよね。
久美子と真由がソロを獲るために挑む、あのシーンです。
吹き分けしたのですが、これがとんでもなく難しくて…。
もちろんどちらも全く手なんか抜いていません。
真剣勝負の音です。
そのうえで、久美子らしさ、真由らしさを出さないといけない。
どうやって出すのか。
黒江真由だったら、すごい技術力を活かして、正確な演奏ができる。
トランペットの麗奈ともピッタリ息を合わせて。
黄前久美子だったら、音楽が好きって気持ちを全面に出して、楽しく演奏するだろう。
ずっと夢だった麗奈とソロを吹きたいという思いを、全力でぶつけるだろう。
そんなことを考えながらレコーディングしました。
そんな吹き分けの演奏はこちらです。
作編曲でも携わることに
久美子と真由の演奏を担当した「響け!ユーフォニアム」3ですが、作編曲家としても参加させていただきました。
ここもネタバレ含みます。ご了承ください。
ムーンライト・セレナーデ
転校生である黒江真由が演奏している「ムーンライト・セレナーデ」。
ジャズで非常に有名な曲ですが、この曲をユーフォソロバージョンに編曲させていただきました!
しかし、自分で編曲しておいて難しすぎる…!(笑)
僕はよく、自分で作曲編曲したりしておいて、自分の譜面に苦しめられることがありますが、今回もまさにそれ。
「蜻蛉奇譚」と「雨夜の月」
この2曲は、久美子達の北宇治高校吹奏楽部で夏の吹奏楽コンクールの自由曲を決める時に登場します。
惜しくも選ばれない自由曲の候補曲です。
アニメの中ではほんの少ししか流れませんが、なんとフルサイズで作曲してます。
この2曲は普段「響け!ユーフォニアム」の作品を作っている松田彬人さんに原案を作っていただき、そこから僕が作曲するというスタイルで曲を書きました。
普段よく作編曲している僕ですが、原案がある状態での作曲というのはこれが初めての経験。
どこまで自分の色を出していいのか、すごく悩んだんです。
作曲していく中で一つの壁にぶち当たった感覚に…。
でも、学生の頃に作曲で悩んだことを思い出し、
「自分の色なんて勝手に出るもの。出そうと思わなくたっていい。」
そんなふうに思えることができました。
そう思ったら自然と筆が進み、なんとか書き切ることに成功。
2曲とも北宇治高校吹奏楽部では選ばれませんでしたが、既存の吹奏楽曲にありそうな完全オリジナル作品となっています。
ぜひお聴きください!
おわりに
「響け!ユーフォニアム」という作品は、僕にとって人生そのものと言っても過言ではありません。
ここまで「響け!」のことをたくさん書いてきましたが、浪人が決まった当初はまさかこんなに色々な出会いがあるなんて思ってもみませんでした。
同じ学年のみんなより1年間も置いてけぼりにされるつらさ、みんな大学に入って楽しそうなのに、一人だけ高校生でもない、大学生でもない狭間にいる不甲斐なさ。
いろんな気持ちを味わってきました。
でもこうして「響け!」を通じていろいろな人へ音楽が届けられたこと、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。
楽器、続けてて良かったなって思いました。
今後も「続けててよかった。」そんなふうに思えるように、へこたれずに頑張っていきたいと思います。