あなたは、楽器を演奏するときに緊張しますか?
僕は死ぬほど緊張します。
今まで何度かソロを吹く機会がありましたが、その度にとんでもなくお腹が痛くなったり、ストレスで胃が張り裂けそうになったり、メンタルがやられてしまったりしていました。
まあ、そこまで緊張したとしても、ソロが上手くいったときはまだ「あんなに緊張したけど、なんとかなってよかったな」と明るい気持ちで一日を終えられるのですが、問題は上手くいかなかったときです。
「おいおい、あんなに練習したのにどうして…」
「あのとき、もっとブレスしっかりとっていればなあ…」
後悔しても、もうどうしようもありません。
そんな日は脳内で反省会が行われます。
一度失敗してしまうと、(あんな失敗したくない)という思いから更に緊張してしまい、余計に上手くいかず…と、何度繰り返したことか…。
そんな緊張しやすい僕ですが、いろいろな本番を乗り越えていく中で、僕なりに緊張しにくくなる方法を発見してきました。
今日は「緊張の対処法」を紹介したいと思います。
もちろん100%緊張しないなんて保証はできませんが、少しでもできることをしておいたら、本番が楽しく演奏できる確率があげられますよ。
脳に叩き込む
一番僕が効果を感じたのは、「脳に叩き込む」ということ。
「体に叩き込む」というのは、聞いたことがあるかもしれません。
もちろん、体に叩き込むというのもとても重要なのですが、ここではあえて「脳」に叩き込ませることを書きます。
それはなぜか。
答えは、脳に叩き込ませたものは、どんな状況下でも思い出せるからです。
体に覚えさせた場合
先に体に叩き込ませた場合の話をします。
僕も経験があるのですが、頭が真っ白になってしまった本番、本当に怖いですよね。
高校生の頃、人生初のソロコンクールの舞台です。僕の頭は緊張で真っ白になってしまい、あんなに練習したはずの曲の、最初の音を思い出せなくなってしまいました。
最初の音ですよ?ウソみたいな話ですが、本当の話です。
しかも、なんとユーフォの音から始まる曲でした。(ユーフォが入ったあとにピアノ伴奏が入る曲)
「僕が音を出さないと、始まらない…。ええい、もうどうにでもなれ、吹いちゃえばなんとかなる!」
強行突破です。
結果は…。
なんとかなりました。体が勝手に覚えていたようです。
このように、体に覚えさせるくらいまで練習しておくと、最悪のピンチのときに助けてくれる可能性はあります。
しかし、本当にとんでもない量を練習しなければならなかったり、何よりこんな怖い思いするの嫌ですよね…。
脳に覚えさせた場合
「脳」に覚えさせるとはどういうことなのでしょうか。
ズバリ、記憶として定着させるということです。
突然ですが、お風呂で体を洗う順番ってだいたい決まっていませんか?(僕は決まっています。)
毎日やっていることなので、どんなに疲れていても自然と決まった順番で洗えますよね。
でも、これ説明してくれって言われると、「あれどこからだっけ…」となってしまったり、一回体を洗う順番を間違えると全部狂ってしまいませんか?。
これは、体で覚えてしまっているからこその現象です。
脳に覚えさせるというのは、順番をきちんと説明でき、仮に途中間違えてしまっても次の順序に戻れること。
楽器の練習に例えてみると
体に覚えさせる:とにかく何回も繰り返す。
脳に覚えさせる:あえてただ繰り返すことをやめて、毎回工夫をしながら繰り返す。
脳は「刺激」を受けることで、記憶が定着していきます。
脳に覚えさせる具体的な方法
①楽器を置いて、歌だけ歌う
楽器を一度置き、歌うことで、リズム、音程(ピッチ)などを脳に叩き込みます。
②息のみ、楽器を吹いているようにシュミレーションする
息づかいを効果的に脳に叩き込みます。
③あえて1オクターブ変えて吹いてみる
あえて元の楽譜を変えることで、もう一度新鮮に曲のフレーズを考え、脳に叩き込みます。
④テンポをゆっくりにする
普段吹いているテンポからゆっくりにすることで、一つ一つの音の吹き方を脳に叩き込みます。
その他
速い連符→音符に符点をつけ、リズムを変えて吹いてみる
スタッカート→すべてスラーで繋げてみる
スラーでつながったフレーズ→スタッカートで吹いてみる
など考えてみるといくらでも出てきます。
ここでのコツはとにかく、脳に刺激を与えること。それによって、脳はその曲の細かい情報まで記憶することができ、仮に緊張したときにも、吹き方がわからなくなってしまうという事態は避けることができます。
僕はこの方法で、緊張しても慌ててしまうことなく、普段の吹き方を思い出して、落ち着くことができた本番が何回もあります。
なりきる
ここまで脳の話をしてきましたが、ここからは考え方について考えたいと思います。
人間ってメンタルから体への表れってすごいですよね。
例えば、緊張してお腹が痛くなったり、足が震えたり、口が震えてしまったりとこれも体への表れです。
しかし、「緊張」は紛れもなく自分で作り出している感情。
ということは、逆に考えて、メンタルさえ虚勢を張ってしまえば体への表れはなくなります。
「嘘だろ…」と思ってしまうかもしれませんが、僕の場合は「僕は緊張しにくい人なんだ」と思い込んでしまうだけでだいぶ緊張しなくなりました。
もし、なにかに例えると、ミュージカルで誰かの役をやっているような感じです。
「緊張しない人」になりきってしまう、とってもシンプルですが僕の場合は大きな効果がありました。
大きく見せようとしない
自分が普段できないこと、これをやろうとするとすごいリスクですよね。
できるか、できないかわからない。
ましてやこれをみんなの前でやるとなれば、緊張するのは当たり前です。
だからこそ、できるか、できないかは冷静になって考えたいもの。
普段練習していたとき、できていたこと、たくさんありますよね。
できていたことだけを、淡々と気持ちを込めて演奏する
こんな精神状態のとき、僕は上手くいくことが多かったです。
このとき、大きく見せようとしてしまうと、普段やらなかったあんなことやこんなことを考え出してしまい、結果的に緊張してしまうパターンが僕にはたくさんありました。
もし頑張って練習してきたけれど、それでも成功確率が低いとき、そんなときでも決して諦めないで。
一度でも成功していたら、成功できる可能性は0じゃないんです。
今、自分ができることを、ただひたむきにやることが大事です。
「慣れ」はあるのか問題
よく、「緊張なんて慣れだよ」って言葉、聞きませんか?
これは僕が学生の頃に、いろいろな先生に緊張について相談したときにも、よくこのように答えてもらった記憶があります。
あれから、いろいろな本番をたくさん乗り越えてきましたが、
現在(石倉雄太25歳)、しっかりと緊張しております。笑
正直、慣れなんてこないと思っています。
でも、いろいろな対処法は探すことができた。これはある意味一つの「慣れ」なのかもしれませんね。
おわりに
散々偉そうに書いておいて何なのですが、100%上手くいくのなんて、とても難しいです。
対処法なんていっておいて、未だに緊張することはあるし、ましてや上手くいかないことだってあります。
でも、いいじゃないですか。我々、人間なんですから。
きっと最近流行りのAI搭載高性能演奏ロボット(?)なら、音を外さないし、アタックも完璧だし、タンギングは正確で、ピッチもずれない。なんて完璧な演奏ができるかもしれません。
でも、それが本当にいい演奏なのでしょうか。
人はそれに感動するのでしょうか。
僕は違うと思います。
ちょっとしたことで悲しくなってしまったり、緊張してしまって上手くいかなくなってしまう、そんな不器用な人間が、いい演奏を目指して必死に努力している。そんな姿に感動してしまうのだと思います。
だから、もし緊張で悩んでいて、死ぬほど悩んでいて、演奏が楽しくなくなってしまっている人は思い出してほしいんです。完璧な人間なんて誰もいないっていうことを。
この記事が少しでも、緊張で悩んでいる人の参考になればとても嬉しいです。