「音色を良くしたい。」
これは僕も含めてユーフォニアムを演奏している人、みんなの永遠のテーマですよね。
ただひとつ考えてほしいのですが、「音色が良い」とはどんな音色でしょうか。「声」で考えてみるとわかりやすいのですが、10人いたら10人とも違う声をしていますね。楽器も同じで、まったく同じ音色というものは存在しません。
だからこそ、「あのプロ奏者みたいな音を出したい!」と思うことは全く問題ないのですが、(むしろ憧れからの努力はとても大事)本当の意味でプロと同じ音を出すのは難しいのです。
今日は「音色」について書いてみました。
心に「理想の音」を持つ大切さ
あなたにとって「理想の音」はどんな音ですか?
部活で尊敬している先輩の音、演奏会で聴いたプロの音、CDで聴いた好きな演奏…。きっと誰もが一度耳にした音を、理想の音にしているのではないでしょうか。
僕も経験がありますが、小学生の頃、初めてプロのユーフォニアム奏者の演奏を聴いたときは、本当に衝撃的でした。高い音から低い音まで艶があり、胸に直接届くような素敵な音色だったのをよく覚えています。
普段レッスンしていると、「どんな音がユーフォニアムにとってふさわしいんですか?」という質問をされることがあります。僕はここの「理想の音」に関しては、自分が好きな、心地よい音色を掲げるのが一番良いと思っています。
というのも、誰かから「〇〇のような音で吹け!」と命令されるエネルギーよりも、自分から湧き上がる「吹きたい!」というエネルギーのほうがはるかに上達できるからです。
もし「まだ理想の音に出会えていない。」という方は、ぜひいろいろな演奏を聴いて「こんな音を出したい!」という音に出会えるといいなと思います。
理想の音を出すためのヒント
理想の音と今の自分の音色にギャップがあるとき、どんな練習をしたらいいのでしょうか?
「音色」を作っている要素は、人間の骨格、筋肉、息の使い方、口の使い方まで本当に様々な要素が絡み合って作られていますが、その中でも特に影響が大きい「唇の使い方」に注目してみましょう。
リムの中の唇を柔らかく→柔らかい音色
唇を柔らかくすると、音色も柔らかくなります。
唇と言っても具体的には、リムの中の唇です。唇の両端をロックして、リムの中だけ唇の力をふんわりさせることで、唇の振動が大きくなり音色が柔らかくなります。
このときの注意ポイントは、柔らかくするけれど、上唇と下唇はしっかりと密着させること。しっかりと密着させることで、息のエネルギーを余すことなく振動に変えることができます。
リムの中の唇を固く→硬い音色
逆にリムの中の唇を固くすると、音色も硬くなります。
もちろん、唇を固くするというのは力を込めるというわけではありません。力を込めるのではなく、上唇と下唇の密着度をよりアップさせるような感覚です。
音色が柔らか過ぎてしまう場合に試してみましょう。
状況に合った音色を
ここまで「理想の音」を求めることを書いてきましたが、ここからはひとつステップアップ。
状況に合った音色を出すということです。
例えば、合奏中でもアンサンブル中でも、ユーフォニアムは様々な役割に刻々と変化していきます。時には旋律を、時には伴奏を。そしてユーフォニアムの得意な対旋律など、その与えられた役割は決して一つだけではありません。
だからこそ、その時の状況にあった音色を使いこなせると、曲の表現の幅がグンと広がります。
僕は音色をよくパレットに例えたりしますが、いろいろな絵の具があればいろいろな色が作り出せるように、音色もいろいろな音を持っておくと、曲の中で自分らしい表現がよりしやすいです。
もし今の自分の音色があまり好きではない人も、その今持っている音色もきっと役に立ちます。
自分の音色を変えるのではなく、バリエーションを増やしていくイメージだといいですね。
おわりに
音色をよくしていくには、もちろん楽器の技術をあげていく必要もありますが、それ以上に自分の感性と向き合ったり、自分の音の聴き方と向き合っていくことが大切です。
毎日少しずつ変わっていくと、自分では変化に気づきにくいですが、考えながら練習していくことで必ず理想の音に近づいていけます。