こんにちは、石倉です。
僕は約2年前に、洗足学園音楽大学を卒業しました。
正直、小さい頃から目指していたというわけではなく、浪人して行くところがなかったので仕方なく入学したところです。
最初はあまり乗り気でなかった洗足音大。
それでも入学してみれば、洗足でしか出会えなかったであろう素晴らしい方々とたくさん出会うことができ、今では洗足に入って本当に良かったなという気持ちでいっぱいです。
しかし、卒業した今だからこそ思うこと。
それは、入学前に抱いていた音楽大学の想像とはかなり違った部分があったということです。
特に違ったのは、音楽大学を卒業すればそれなりに音楽の仕事がもらえるようになると思っていたのですが、現実はそうではなかったのです。
音楽の仕事があふれていると思っていた高校生時代
僕が音楽大学を目指し始めた高校生の頃。
音楽大学を卒業したら、音楽の仕事はあふれているものだと思っていました。
高校の時見た色々な音楽大学のパンフレットには、音楽業界で活躍している素晴らしい著名な方々がたくさんいます。
有名なオーケストラで活躍していたり、ソロ奏者として活躍していたり、とってもキラキラした世界。
このキラキラした世界に入って、自分も音楽家として有名な奏者の一員になれるのだと思うと、とてもワクワクした気持ちで音楽大学を目指していました。
「音楽大学に入って卒業したら、いろんな仕事が待っているんだろうな」
そんなことを考えていたのをよく覚えています。
現実は一握り
しかし、現実はそんなキラキラした世界ではなかったんです。
正確に言えば、キラキラした世界というのはごくわずかということ。
令和6年の音楽大学における音楽学部の総生徒数は、12,814人です。
(ソース元:令和6年度 高等教育機関 学校調査 学校調査票)
そこから計算すると、おおよそ毎年3,000人が音楽大学の音楽学部を卒業していることになります。
つまり、毎年約3,000人が音楽家として世に放たれていることに。
これ、すごい数ですよね。
高校生当時の僕も、冷静に考えてみればわかったと思うのですが、この3,000人という数。
どう考えても需要と供給がずれています。
例えば、日本のプロのオーケストラ団体が所属する日本オーケストラ連盟の発表する、日本におけるプロオーケストラの全楽員数は、2022年時点で2,353人です。(ソース元はこちら)
そう、たったの2,353人。
もちろん、この他にもプロとして活動している方はたくさんいらっしゃいます。
しかし、日本のプロオケの全楽員数が、毎年卒業している音楽部の学生数よりも少ない。
これだけでも、音楽業界においての需要と供給のずれはおわかりいただけるかと思います。
つまり、音楽大学のパンフレットに載っている有名なオーケストラで活躍している方というのは、本当にごくごくわずかのキラキラした部分なんです。
音楽大学で教わることは「いかに良い音楽をするか」
本当にごくごくわずかのキラキラした部分を、とにかく目指していくのが音楽大学。
音楽大学で教わることは、「いかに良い音楽をするか」
その方法をとにかくたくさん学びます。
レッスンの回数も年間30回と受けられ、それ以外にも、吹奏楽やオーケストラの授業、室内楽の授業。
それに加えて洗足学園音楽大学では副科が自由に選べるので(音楽大学ではかなり少ない)、ユーフォニアムを専攻しながら作曲のレッスンだって、ヴァイオリンのレッスンだって受けられるんです。
「良い音楽」を習得し、練習できるという環境はとにかく整っている音楽大学。
でも何度も言いますが、これだけの環境があったとしても。
僕が高校生の頃見た、キラキラした音楽大学のパンフレットの世界に入ることは相当難しい。
その反面、就職支援はあまり活発ではない
キラキラした世界はごくわずか。
なら、就職支援などが充実しているのかと思ったら…。
就職支援はもちろんありますが、かなり自分から動かないと受けられません。
一般大学のように、周りが自然と就職活動を始めたから、就職活動をしようと思っていたら取り残されてしまうんです。
あくまでも、自分から就職したいという思いを強く持ち、大学の就職支援課などでやっているセミナーなどに自分から積極的に参加したりしなければ、音楽大学から就職するというのはかなり難しいなと、僕は感じました。
現に音楽大学卒業時には、音楽だけじゃ食べていけないだろうとの思いから、一度就職している僕。
(現在はフリーランスの音楽家として活動中。)
就職活動は、思った以上に周りと異なるエネルギーが必要です。
というのも、周りはいかにいい演奏をするかばかり考え、とにかく音楽の練習しかしていないから。
音楽大学で学ぶスキルのずれ
需要と供給があまりにもずれている音楽業界。
そんな音楽業界でなんとか活動している僕が感じたことは、音楽大学を卒業した後に必要なスキルと、音楽大学で学んでいるスキルのずれ。
もちろん大前提として、「より良い音楽の追求」をしていくことはとても大切なこと。
音楽で生きていくというのは、まさにこれの連続だと思っています。
でも。
本当に実力があって運もあって、音楽大学のパンフレット上のキラキラの世界に入れる人。
そんな人ばかりではないのが現実です。
キラキラの世界以外でも音楽の仕事はある
じゃあ、キラキラの世界以外では音楽の仕事なんてないのか。
全くそんな事はないと僕は思います。
音楽大学ではとにかくより良い音楽を勉強。
とにかく勉強して勉強して、音楽にとても詳しくなったら
「ハイ、サヨウナラ」
と急にバイバイされたと感じてしまうくらい、卒業した瞬間というのは衝撃でした。
これまでに当たり前にあった仲間、楽器を練習できる環境、毎週のようにあったレッスンや授業。
それらがすべてなくなってしまうんです。
だからこそ、卒業してから必要なのは自分で仕事を作っていけるスキル。
今の時代は昔と異なり、自分から発信するというのが容易にできる時代になりましたよね。
僕は卒業してから自分でホームページを作ったり、ブログを書くようになって少しずつ、音楽の仕事に結びついてくるようになりました。
もちろん、先輩方や先生方とのご縁を大切にするというのも立派なスキルです。
そんな、卒業後に必要となるスキルを、音楽大学では自分から進んで学んでいかないとなかなか難しいのが現実。
音楽大学を卒業したら勝手に仕事が舞い込んでくる、なんて考えていた高校生の僕からしたら、かなり大きなギャップでした。
おわりに
僕は高校生の頃は、音楽大学を卒業したら勝手に仕事が舞い込んでくるものだと思っていました。
でも、実際に大学に入って卒業してみたら…。
思っていたキラキラの世界は、本当にごく僅かな部分なんだと実感することに。
思っていた理想とはだいぶ違い、落ち込んだ時期もあります。
しかし、音楽大学に入ってみて新しい発見も。
それは、音楽大学のパンフレットのキラキラした世界以外にも、たくさんのキラキラした仕事が広がっていたということ。
音楽大学のパンフレットには載らなくったって、目の前の人を音楽で幸せにできる仕事がたくさんあることを知りました。
少しずつですが、そんな「キラキラした仕事」を、音楽の活動を、もっともっと広げていけるように、僕自身精一杯頑張っていきたいなと思っています。
コメント